これでVIPか?!
「翻訳の世界」海外レポート 1997年9月号掲載
先日仕事で日本○×協会のVIP6人をストックホルム市内の高級レストランへ案内した。メンバーは日本○×界の頂点に立つA氏とそのお付きの人達B〜F氏、いずれも30代後半から60代の男性である。まず会うなりから私の身上調査を始める。一部の日本人は他人のプライバシーに立ち入ることは当然の権利と思っているらしいが、どうやらこの人達もそうらしい。夫も子供もいるのに夜働きに出ていると知ると「そんなことしてていいのか」と驚き(妻子がいるから残業を断るという男がこの世にいるだろうか) A氏は「そんなに亭主に相手にされないんなら、何ならワシが …グヘグヘ」と笑った。
スウェーデンの印象をたずねると、D「女性が一線でバリバリ働いていますね。日本ではそれでもやっぱりまだ腰掛け程度の人が多いでしょう」 A「しかし、ブスが多いわ」 B「尻がでかい。あのオバサンなんかすごいで(と、別のテーブルの女性を目で示す)」 C「しかし、働く女性というのもいいねえ。うちの嫁さんなんか一日中家にいるもんだから、夜家に帰ったらここぞとばかりに、今日あったことを喋りまくられる」B「そうそう、しかも隣の奥さんがどうとか、しょうもないことばかりねえ」A「ところでガイドさん(私のこと)、ポルノクラブはどこにあるのかね」スウェーデンでは裸の女性はおろか、ホステスのいるクラブもないと説明すると、C「おかしいな、スウェーデンはフリーセックスじゃないのかね」 B「やっぱりもう東南アジアしか残ってないのか」
A「ガイドさんもフリーセックスじゃないのかね? 」(なんでやねん)私は日本人ですから。C「いやいや、日本だって今は相当なフリーセックスですよ」 A「なにっ、ほんまか!! 」
こうして延々とフリーセックス談義が続いたあと、食事を終えて外へ出た。私が通りでタクシーを待っていると、レストランからさっきの尻の大きいオバサンが出てきて反対側の通りの方へ歩いていった。その時私のそばにいたB氏が彼女の後ろ姿に向けて「ブタ!! 」と大声で叫んだ。そして私に「何を言ってもわからないっていうのはいいね」と言った。そんなことないですよ、悪口だけはどこでも通じるみたいですよと答えると、「そういや、日本で黒人と街ですれ違った時、『クロンボ!! 』と言ってやったら、なんだか怒ってたみたいだったもんなあ」と言った。
もう午後9時をまわっているというのに外はまだ薄明るく、タクシーの窓から見える王宮前の湖面には銀色の雲が映っていた。スウェーデンの夏は美しすぎて日本に帰りたくなくなるほどだが、その夜私はますます日本に帰りたくなくなっていた。
(さよこ)

