心の色
「翻訳の世界」海外レポート1996年9月号掲載

私がスウェーデンに来て初めて出会った世にも不思議な人たち・・・と書くと大変失礼だが、私は世の中にこういう人たちがいることをそれまで知らなかった。
外見が全く東洋人でありながら中身が西洋人な人たち。スウェーデン国内には現在約1万人ほど、国際養子縁組によってこの国にやって来た人たちがいるという。彼らの出身地はアフリカ、中南米、インド・・・と様々だが、私と同じ年代で東アジア人の顔をしている人はたいてい韓国出身である。圧倒的に女性の方が多いのは、男性ならば韓国国内にもらい手がいたからだろうか。赤ちゃんのときスウェーデン人夫婦にもらわれたので、言葉も生活習慣もまるでスウェーデン人。立ち居振舞いを見ればすぐ養子とわかる。
いったい彼らは自分自身のことをどう考えているのだろう? 本当に失礼ながら養子を見かけるたび、私はいつも思っていた。外見のまったく違う親を持ち、自分自身の祖国の文化も自分のルーツも知らず、なおかつ完全なスウェーデン人というには何か一言付け加えずにはいられない・・・。それに彼らが私たちのようなアジアで成人してスウェーデンにやって来たアジア人を見かけたとき、何を思うのだろう・・・。
そのうち何人かの韓国系養女と知り合う機会があり、わかってきたのは、人によって自分のルーツ、イコール、アジアにすごく興味がある人と、そんなものはまったくなく自分はスウェーデン人と割り切っている人の二種類いることだ。もちろん後者は私を見ても挨拶以上は何も話さない。
Aさんは前者だった。まるっきりスウェーデン人の名前をもつ彼女の本名は黄美銀といって生地もソウル市ではなかったことが30歳も近くなってやっとわかったのだそうだ。
「養子がもらえるのは裕福な家庭だけなので、もし私が韓国で孤児になっていたことを思うとここに来れて経済的には幸福だったと思う。でも私はスウェーデンに貧困から救ってくれてありがとうとは思っていない」
日本語のクラスに来ていたBさんは
「韓国や日本の文化には興味ある。でも本当の親に会いたいとは思わない。私にはスウェーデンにすばらしい両親がいるんだもの」
スウェーデンの家族のあり方は日本のそれとかなり違うようだとつねづね思ってきた。私だったら肌の色が違う子供を自分の子として育てられるだろうか・・・?
(さよこ)


