ノリコの明日
「翻訳の世界」海外レポート、1999年9月号掲載
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私が講師をしている日本語講座では、毎学期一回日本の文化に関するビデオを
鑑賞する日を設けていた。このようなビデオはテーマ別に計二十種類ほどあり、
いずれも日本大使館が無料で貸し出ししている。今回私が選んだビデオは「日本の習慣」
と「ノリコ」の二本だった。「日本の習慣」はその名のとおり、お辞儀のしかたや
玄関での靴の脱ぎ方など、日常生活の中での様々なしきたりを教えるもので生徒
たちにも好評だった。だが「ノリコ」の方は今一つだった。

紹介文には「日本の職場に進出する若い女性の生き方… 云々」とあったので興味を
そそられたのだ。ノリコはキャリアを目指す女性で、セクハラもなんのその、
子連れで共働きなんかしちゃってるのかなぁ… と思いきや、内容は全然違っていた。
東京の短大を卒業して某社に就職したものの理由もなく三ヶ月で退職。再就職を
目指すがなかなか思うにまかせない。女性の面接官の中には「なんとなくで辞めた、
っていうのはちょっと甘いんじゃない」とはっきり言う人もいた。結局ノリコは
東北の田舎に一時帰郷。そこで両親に見合いを勧められる。格式の高い旅館の
一室を借りての正式なお見合い。仲人を挟んで魚料理のお膳が並べられ、双方の
両親が向かい合う。そこに振り袖を着て入って来るノリコ。相手は横浜銀蝿を
彷彿とさせる田舎の元ヤンキー系、でもこの日ばかりはしっかり背広を着込んでいる。
互いの家系や学歴、趣味などを披露する両親。ここでビデオは終わるのだが、
生徒の感想は「ようわからん」。

正直言って私もようわからんビデオだった。
これが日本の若い女性の典型的な生き方なのだろうか。
もっとも製作は十年前(1989年頃)だというのも考慮にいれなくてはならない。
でもあの頃の自分や友達に重ね合わせてみれば、やっぱりノリコは平均値の日本女性かもしれない。
学歴はつけたものの、職場には馴染めず、かといって転職もままならず、結局
結婚するしかない。

でももしこれがスウェーデンの若い女性「レーナ」というビデオを作るのだったら… 。
高校に進学しないレーナ、未婚の母になり生活保護を受けるレーナ、
パリで住み込みのお手伝いさんになるレーナ、電子工学を専攻するレーナ、
二十代で大企業の課長になるレーナ… どのレーナも珍しくない若い女性で、
ひとつの典型的なタイプに括るのはとても難しい。どんな生き方も容認される
自由さがあるとでも言おうか。今日本の女性もそういうふうになりつつあるのでは
なかろうか。
だとしたら素晴らしいことだと思う。

もしこのビデオの改訂版を作るのなら、もっといろいろなノリコを登場させて
ほしいと思った。

(さよこ)


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