人生の再出発
「e−とらんす」海外レポート、2001年8月号掲載

スウェーデンでは成人教育が充実しており、人生半ばからの再教育が可能である。
その大きな理由はほとんどの教育が無料で受けられること、生活費として学生ローンと
補助金が受けられ、家庭がある人も最低限の収入が保証され経済的な心配なく学業に
励めるからだと思う。学校は多彩だ。大学入学に必要な高校の課目が履修できる成人学校は
それぞれの市町村にあり、大学の他にも専門的職業訓練の受けられるコースは数多く存在する。
ゆえに中学や高校からストレートに進学する人もそう多くない。しばらく働いたりブラブラしたり
して人生経験を積み自分の道を見極めてから将来を決めるのだ。
私は今年1月からプログラミングを専修する1年コースに通い始めた。
子持ちであまり若くない私が今からコンピュータを勉強するなんて。
日本の友達に言うと「本当にそんなことしていいの?!」とまるで銀行強盗でもするか
のように驚かれた。
実際入学してみると、生徒は30代半ばの私と同年代以上が全体の半数近くおり、
子供が2、3人いるというのは当たり前。それまでコンピュータと関わりのない仕事を
していた人がほとんどで、皆人生の新しいチャレンジを待ち望んでいた。
外国人の私は授業で予想以上に苦労した。まず専門書が思うようにスラスラと読めない。
特に技術英語には泣かされた。英語にほとんどハンディのないスウェーデン人と一緒に、
英語からスウェーデン語へ、スウェーデン語から英語へ訳さなくてはいけないのは苦痛だった。
このままでは授業の速いペースについていけないと思い、日本の友達に電話し日本語の専門書を
送ってもらったりもした。
泣きたくなるような始めの二ヶ月を経て、なんとか春学期の課目は全て及第点がとれた。
この及第点には同級生の助けが大きくものをいった。できなくて恥ずかしいという感情を捨て、
皆に積極的に助けを求めたのが正解だった。
秋学期には言葉の問題はほぼ脱したものの、(とは言っても本を読むときには本当に苦労しているが
・・・なにしろ母国語で読むのに比べ時間がかかりすぎ)インスタントラーメン的な授業の内容に
(だいたい、プログラミングってい1年で学べるようなもんか?)
疑問をもつようになってしまった。他の生徒らも同じようなことを考えていたようだが、
スウェーデン人が日本人と似ている点は、問題があっても陰でこそこそ言うだけで、積極的に解決の
道をなかなか探ろうとしないところだ。
このままでは人生半ばの再教育が実のないものになってしまう。
そんな危機感を持った私は一人で先生(男性)に掛け合い、時にはヘビとマングースのように大喧嘩もした。
人間が本心をぶつけ合ったとき、お互いに我を張っていつまでも平行線になるときも
あれば、「雨降って地固まる」じゃないけど、より仲良くなれる場合もある。
私と先生は幸いにして後者だったかもしれない。ただし学期の最後の方になると、それが思わぬ
ところで誤解を呼び、「さよこと先生ってひょっとして・・・」などと考える生徒がいたと知ったときは
お笑いだった。
スウェーデン人って実は世界に名高い「嫉妬心の強い国民性」だということは色々な人から聞いている。
何もかも平等を叫びたがる福祉社会はその嫉妬心から生まれたのかもしれない。
まあ、もうどうでもええわ、そんなこと。
とにかく秋学期も全ての課目で合格点をもらい、無事卒業できたことをうれしく思う。
「もうダメだ・・・」と幾度となく挫折しかけたことを思うと夢のようである。
ネット上でいろいろご声援くださった皆さん、本当にどうもありがとう!!
(さよこ)


