両親学級に参加して
「翻訳の世界」海外レポート1997年8月号掲載

スウェーデンでは出産前と後、数回にわたって両親(母親ではない)学級がある。
出席は強制ではないが、この機会に悩みを保健婦さんに相談したり、他の親とも交流できるのでこのような学級があるのはなかなかよいことだと思った。
さて、出産後子供を連れての初めての会合(この時になるとたいてい母親しか来ない)で、一人のスウェーデン女性がこう自己紹介した。「私は一人でこの子を育てているの。妊娠中からずっと一人なの」 未婚の母はこちらでは全く珍しくないが、それでもたいていの女性が子供の父親であろう男性と一緒に暮らしている。彼女のようにもとから一人の覚悟で子供を作ったという人を見たのは、私は初めてだった。日本で言うところの、未婚の母か? いくら母子家庭に対する援助が整っているスウェーデンでも、最初っから一人では子育てはかなり大変だろう。なんて勇気ある女性! 普段は看護婦というその母親の顔を私はしげしげと見つめてしまった。しかしまわりの母親たちは「へー、そう」というかんじでちっとも驚いていないようだった。
私はこの女性の子供の父親と思われる男性を一回見たことがある。初めての両親学級の時、彼女に無理矢理引きずられるようにしてやって来た若い男。授乳のビデオをにやにや笑いながら見たりして不真面目、彼が子供を望んでいないことは誰から見ても明らかだった。もちろん彼はそれっきり学級には姿を現さなかった。
それでも彼女は子供を産みたかったのだろうか。少しイングリッド・バーグマンに似たしっかり者そうな彼女を見ていると、重荷を背負ってでもがんばるだろうなあという気はする。
ある雑誌に「一人で子供を産み育てることを選んだ女性」に関する記事が載っていた。そのアンケートによると、一番大変なのは、夜の授乳やおむつ替えを手伝ってくれる人がいないこと、いつも子供べったりでいなくてはならず息抜きができないこと。しかしその他には、同じ環境にいる友達と助け合い密接な友情関係ができる、子供を自分の思ったとおりに育てることができる、などよいこともたくさんあるという。それ以外にもよいこととして「夫がいないと手間がはぶける」、「夫との関係に煩わされることなく子供のことに集中できる」という回答にいたっては、なんだか男って種付け以外に用はないのか、と言いたくなってしまうが、これらのアンケート回答者全員が自分の選択に後悔はない、と力強く答えている。
しかしこんな記事を見るたびに思うのが、やっぱり日本は家族単位、こちらは個人単位で物を考えるのだなあということである。だが日本には「亭主元気で留守がいい」という言葉もある。ひょっとしたらその辺はけっこう万国共通なのかもしれない。
(さよこ)

