変わるバカンス


「翻訳の世界」海外レポート1999年2月号掲載
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98年の夏、スカンジナビア航空のおもしろい広告ポスターを見た。帽子をかぶり首からカメラを下げた日本人らしき初老の男性が、ヨーロッパ各地の観光スポットで感嘆の声を上げている。その写真の上にこんなコピーが載っている。「日本人みたいなことしてみよう」

日本人の団体さんがヨーロッパに観光に来たら、まさか一都市だけを見て帰国ということはまずない。北欧ならばヘルシンキに一日、ストックホルムに一日、コペンハーゲンに… と、まるでバッタのように各地を飛び回る。それが日本人の海外旅行のスタイルなのだ。

一方ヨーロッパ人の伝統的バカンスとは「一ヶ所に滞在すること」である。気候が温暖で海のそば、できれば名所旧跡もある風光明媚な土地のホテルに一週間以上泊まり込み、のんびりと過ごす。彼らにとって日本的バッタ旅行は苦行以外の何物にも見えないという。
「たった一日その土地にいて街のダイジェストを見たからって何がわかるというの。そんな忙しい旅行をしたらバカンスどころかかえって疲れてしまう」

ところが業界ではヨーロッパ人はこんな滞在型バカンスにそろそろ飽いているといわれている。皆もっと新しい形の長期休暇の過ごし方を模索しているのだ。そこでこのポスターとあいなったわけだが、実際この夏わたしが行ってみた地中海のリゾート地でも10年くらい前からあちらこちらで大きなホテルが閉鎖されていると聞いた。

私としては、こちらに来てから遅まきながら滞在型旅行のすばらしさに目覚めたクチだ。翌日の起床時間を気にする必要もなく、食べたいときに食べ、眠りたいときに眠る。昼間は浜辺に寝そべって肌を焼きながら、ぼんやり波を眺めたり気に入った本を読んだりする。これぞ究極のゼータク、黄金のバカンスではなかろうか。もちろん何をおいてもよい天候とおいしい食べ物も不可欠だが。

日本のムシムシジメジメネトネトした猛暑に、芋を洗うような海水浴場(しかも時にはゴミ付き)に行くことがいわゆる「海で泳ぐ」ことだと思って海水浴を敬遠していた私にとって、地中海はまさに別天地であった。

つぶれそうになっている地中海のリゾートホテルを救うためにも、今度は日本人が滞在型の旅行を楽しんでみてはどうか。ヨーロッパ人みたいなことしてみよう。

(さよこ)



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