きのこの森



「翻訳の世界」海外レポート1997年12月号掲載
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秋になった。こんな当たり前のことに感動するのはスウェーデンの秋が余りにも短いせいかもしれない。

8月の終わりまでは暑い。しつこい残暑の中にいるとひょっとして今年はもう冬は来ないのでは、いや、来るとしてもすごい暖冬になるのではというほのかな期待を抱くようになる。しかしそんな気持ちも9月になるとどこへやら。雨が数日降り続けたその後は秋。それもあっという間に晩秋である。

9月半ばには北極圏では雪もちらほら。10月になるとストックホルムでも雪が降り始める。この9月から10月にかけての短い秋、暗闇に引き摺り込まれるようなもの悲しい気分を少し明るくしてくれるものがあるとすれば、それは森のキノコだろう。

ストックホルムは市内から少し外れるともうそこは自然でいっぱい。郊外に住んでいる我が家の裏も森が広がっている。人々は散歩が好きだ。森の中の誰がつけたともわからぬ小道を、家族と、友達と、そして犬を連れて歩く。秋には森だけでなく公園にも、道端にも可憐なキノコが顔を出す。スーパーで売ってるマッシュルームそっくりのものから、白雪姫の絵本に出てきそうな赤い頭に白い斑点がついた直径15センチくらいのものまで。野花が枯れてきたと思ったらキノコがいっせいに花開くのである。秋晴れの日小道でキノコに出会ったら思わず挨拶を交わしたくなる。キノコには不思議な魅力があって、スウェーデンにはキノコフリークもけっこう多いのである。

老若男女問わず、本棚にキノコ百科を持っている人は珍しくない。キノコの種類は数々あれど、やっぱり一番気になるのは食べられるキノコ、その中でもポピュラーなのは黄色いカンタレリ。小刀を持って裏の森に分け入ると、シメジを小柄にして身を引き締めたようなカンタレリを、木の葉の蔭や木の根元に見つけることができる。

カンタレリはサンドイッチに挟んでも味噌汁に入れても最高。松茸のような香りはないが独特の歯応えがある。しかし毎年森で道に迷う人や毒キノコに当たって亡くなる人もいるので要注意。初心者は近所の名人に連れていってもらうか、いわゆるカルチャーセンターのような学習サークルでキノコ狩りのコースもあったりするので、まずはそこから始めた方がよさそうだ。

(さよこ)


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