台北 <2月13、14日>


ランタン第9、10号(1999年9月19日、10月3日)掲載
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台北到着(2月13日)

2月13日金曜日の夜(この日を出発日に決めたのは、とても混んでいた飛行機のチケットが13日金曜日のこの日しかとれなかったことによる)まる一日かかってやっと台北の中正国際空港に到着した。

約束通り、先に台北に来ていた山本さんとそのガールフレンド劉さんが迎えに来てくれていた。台北市内まで空港バスに乗った。日本ではあまり見かけないくらいの古いタイプのバスだった。外の景色もやけにもの悲しく感じられたのはかのバスの照明があまりにも暗いせいかもしれなかった。ガタガタ揺れるバスの中で私は、そしてたぶんランポウも緊張していた。劉さんのお宅に一泊した後、翌日からさっそくツーリングを始めるつもりだったからだ。

そんな私たちをよそに山本さんと劉さんは明るかった。劉さんは台湾の人らしく色が浅黒く手足がすらりと長い。初めて会ったとは思えないほど親しみを感じさせる、朗らかな人だった。私は山本さんと劉さんって、友達といってもどの程度の仲なのか知らなかった。ランポウに聞いても彼女もはっきりとは知らない様子。でも二人とも面と向かって訊ねる勇気はなかった。その頃私には「ガイジンとツキアウ」ということが「宇宙人とコンタクトする」というくらい特別なことに思われたのだ。

バスの中で私たちが談笑していると、前の席に座っていた二人組のスーツを来た中年男がこちらを振り向いた。日本人らしきその男たちは私たちをじろじろと不躾に眺める。とても気分が悪かった。「色情狂(イヤらしいやつね)」と、劉さんは中国語で言った。私たち三人も彼女を真似て「色情狂」と繰り返した。男には通じていないのか、台北に着くまで何度も私たちを振り返った。


台北 (2月14日)

劉さんは夜間大学の学生で、台北市のはずれにある古いマンションの一部屋に下宿していた。到着の夜は歓迎の意味をこめてか?その前年の紅白歌合戦のビデオを見せてくれた。こちらの貸しビデオ屋では日本の人気テレビ番組を録画したものを借りることができるのだそうだ。彼女と山本さんのおかげで初日も外国に来たという不安感を全くもたずにすんだ。

翌朝目覚めてみると、部屋に劉さんの姿はなかった。彼女の仕事は新聞配達だったのだ。しばらくして年季の入った大型カブを駆って帰宅した劉さんは、近くの屋台で油条と豆乳を買って来てくれた。こちらの人は朝食を近所に出ているこのような屋台ですませることが珍しくないのだという。油条は文字どおり油で揚げた細長いパンである、これを暖かい豆乳に漬けて食べるのだ。一般の人が日常的に食べているのだからちっとも高いものではない。でも、とーーーってもおいしい。私は一口でこの油条・豆乳の大ファンになってしまった。この先もとにかく安くておいしい物にバンバン出会う旅になるのだが、この油条・豆乳はさしずめその第一弾だった。

しかし食べ物のことばかり考えていられない。とにかく初日の午後からサイクリングは始まるのだ。飛行機で託送荷物にした自転車は、心配していたより傷んでなかったので助かった。輪行袋からバラした本体と部品を取り出し手早く組み立てる。

アパートの前で見送ってくれる劉さんに手を振り、いざ出発! ここ数ヶ月心の中で温め、計画してきた夢のツーリングの始まりだ。ペダルを漕ぐ足も今までになく緊張する。

サイクリングに慣れた私ですらそうなのだから、これが初めてのツーリングとなるランポウはどんなに緊張していただろう。たかが自転車に乗って走るだけ、なのだがやはり一日に何十キロも走るにはそれなりの慣れと基礎体力が必要だ。それをわきまえてランポウは日本で前もって、長距離を自転車で走る練習をした。普段サイクリング部で練習コースとして使っている30キロくらいの道のりを、私といっしょに何度か走っていた。

どうか途中でバテませんように、そして何より事故に遭いませんように…。そう祈りながら私たちは二週間にわたるツーリングの第一歩を踏み出した。

(さよこ)


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